結果をもたらす原因が網羅されていますか?

弊社コラム「話がうまくかみ合っていないな」と思ったら(前編)では、TOCで用いられるCLRの概要をご説明しました。CLR(Categories of Legitimate Reservation)とは、作成されたツリーや因果関係を精査する第三者が、意見を述べて修正提案を行う検証プロセスです。
CLRには次の3つの段階(レベル)があります。

レベル1:ツリー作成者が記述している単語や文章の意味を確かめる段階です。
レベル2:ツリーなどの中に記された内容(図に表現されるボックス。エンティティ)や関係性が現実に存在しているかどうかをチェックする段階です。
レベル3:文意を補ったり、足りないエンティティを追加したり修正したりする提案を行う段階です。

コラム前編ではレベル1と2について説明しました。後編では、レベル3を構成する項目とその内容のご説明をしたいと思います。

[ Leve 3 ] Cause Insufficiency Reservation(原因の不十分さに関する留保)

ツリーの中に提示された単独の原因だけでは、生じている結果を説明するのに十分ではない場合に行われる見直し提案です。下の2つの図をご覧ください。自社製品の売上減少の原因を検討した図です。

The Tocico dictionary Second Edition

原因と結果を結ぶ矢印「↑」は始点が原因、矢の先にあるほうが結果を表します。左側の図は「自社製品の売上が低下している」ことの原因として「最大の競合他社が類似製品を値下げした」ことを示しています。

一見すると正しいように見えますが、見落とされているもう1つの重要な要因(自社製品価格の据え置き)がありました。もし、自社製品の価格が最大の競合他社の製品より引き下げられたならば、より多くのお客様が自社製品のほうを選択し、結果として、売上低下は起きないかもしれません。よって、これら2つの原因が同時に存在するために、自社製品の売上低下という結果が生じていることが結論付けられました。

再検討後に作成した右側の図では新たな原因が追加されています。このケースでは、2つの原因のどちらかが欠けても当該結果(自社製品の売上低下)は導かれない状況を表しています。つまり原因Aと原因Bが両方成立する場合(「AかつB」のとき)に限ってその結果が生じるという意味です。

このことを図では、2本の矢印を束ねる細長い楕円(アンドマーク)で表しています。「AかつB」は「A and B」と表現されます。ちなみに、図中の細長い楕円はバナナに似ていることからこれを「アンドバナナ」と呼ぶこともあります。また、A, B以外にもC, D, …と複数の原因が「かつ(and)」で結合されているツリーもよくあります。たとえば、「燃焼」という現象を示したツリーをご覧ください。

プログレッシブ・フロー・ジャパンで独自に作成 The Tocico dictionary Second Edition

燃焼は、原因にある3つの条件が同時に揃ってはじめて起こる現象です。言い換えると、燃焼をさせない(火を消す)には3つのうちどれか1つの条件が欠けるように対応すればよいわけです。

企業経営や実社会においても、ある結果が複数の原因の絡み合いによってもたらされることは多々あるはずです。

原因を取り除いても問題が生じ続ける時は?

[ Leve 3 ] Additional Cause Reservation(追加する原因に関する留保)

こちらのCLRは、ある結果を引き起こす独立した原因がほかにも存在する場合に提示されます。ツリーの作成者はその修正提案に納得すれば、提案された原因をツリーに追加します。先述した「Cause Insufficiency Reservation (原因の不十分さに関する留保)」と似ていますが、大きな違いは、複数ある原因のどれか1つでも存在すれば当該結果が生じる、ということです。

次のツリーをご覧ください。

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左側の図はバス通勤を希望する原因(理由)として「マイカーの燃費悪化」を記したものです。同様に右側の図は、バス通勤を希望する原因が2つ(複数)あることを表しています。ただし、右図の原因は独立して存在しています(前述したアンドバナナがこのツリーにはないことをお確かめください)。

「バス通勤を希望する」という結果に対する2つの原因の寄与度は同等だとします。つまり、どちらか1つの原因だけを取り除いても、相変わらず同じ結果が生じることを表しています。右図の場合、マイカーの燃費悪化という原因のみ取り除いても(仮に、燃費の良い車に買い替えても)、バス通勤を希望するという結果が覆らないことを示しています。通勤途中に読書をするのが好きであるから、というもう1つの原因が他の原因とは独立して存在しているためです。

企業経営や実生活において左図のように、見過ごされている独立した原因が隠れたままのことがしばしばあります。「把握した原因を取り除いても、なぜか問題(望ましくない結果、UDE:Undesiable Effect)が解消されない・・・」とお悩みの場合には、気づいていない原因が潜んでいるのではないか、もういちど精査する必要があるかもしれません。

[ Leve 3 ] Predicted Effect Reservation(予測される結果に関する留保)

こちらの検証および提案は、原因となるエンティティやそこから導かれる結果の関係性の確かさに関して疑義がある場合や、賛成を留保して指摘を加える場合に行われます。

次の図をご覧ください。

The Tocico dictionary Second Edition

車が始動しない状況が発生しました。ツリーの作成者はその原因がバッテリー容量の低下(バッテリーあがり)だろうと考えました。もしその仮定が正しいとすれば車のライトをつけてもかなり暗くしか灯らないことになります。しかし、実際にライトをONにしてみると十分な強さで点灯しました。

もしライトが問題なく点灯したならば、仮説として設定した原因(バッテリーがあがっている)は棄却する必要があります。そして、車が始動しない原因をあらためて調査、確認する必要があります。

「予想される結果に関する留保」は、仮定した原因が存在するならば本来起こりえるはずの別の結果を実際に検証してみることで、当初仮定された原因となるエンティティや因果関係の誤りや問題点を見つけることに役立ちます。

こちらに関連して弊社コラム「核となる「問題」に迫るTOCの思考プロセス」もご覧ください。

[ Leve 3 ] Cause-Effect Reversal Reservation / Tautology Reservation(原因と結果の逆転、または、同語反復に関する留保)

原因と結果が逆になっている可能性を指摘する検証プロセスを意味します。次の図をご覧ください。

Cause-Effect Reversal Reservation / Tautology Reservation

左の図は「ドッグフードを買う」という原因(理由)から導かれる結果として「犬を飼っている」ことが挙げられています。なんか変ですよね。一方、右図は「犬を飼っている」ことを原因(理由)として「ドッグフードを買う」という結果が記されています。こちらは理に適っています。つまり左図は、原因と結果が逆になっています。ただ、ひょっとすると何らかの理由で先にドッグフードを買ってしまい、それを消費したいがために犬を飼う必要に迫られた、という可能性も頭ごなしに否定できない個別の事情が存在するかもしれません。いずれにしても、原因と結果の順序が事実と矛盾していないか、逆になっていないか確かめることが大切です。

CLRはレベル1→2→3と順に進める

ある企業では、次のようなツリーを作成しました。

Cause-Effect Reversal Reservation / Tautology Reservation

「よくありそうな話」と思われるかもしれません。しかし、よくみると疑問が浮かんできます。原因として「社員のモチベーションが低下している」とありますが、


  • すべての社員が下がっているのか

  • 逆に上がっている社員や、業績に関わらずあまり変わらない社員もいるのではないか

  • 下がっているとすればどのような部署、または職責を果たしている社員なのか

  • そもそも、モチベーションとは何なのか

など文意や用語の定義において不確かな部分があります。すなわち、レベル1で述べた「用語や文章の明瞭性」に関する確認がまずは必要ということです。そして、レベル2で説明したエンティティ(ボックス)が事実として存在しているのか、あらためて確認するのがよいでしょう。

CLRでは、レベル1→2→3と順に進めることが不可欠です。レベル1や2を飛ばして、いきなりレベル3に取り組んでもあやふやな意味のままだったり、原因や結果のエンティティが存在しなかったりする状態では遅かれ早かれ手戻りが生じるでしょう。なぜならそのツリーや図は、実情を適切に反映していないからです。

前後編にわたってCLRの概要を説明しました。この考え方はTOCの枠組みの中にとどまらず広く適用できます。ぜひ日々の暮らしや職場のなかで意識してみてはいかがでしょう。

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