経営陣が(4つの力の象限、すなわちチェンジマトリクスを使用することによって)変革に同意するために必要な明確さを得て、中核的な対立を明確に特定し理解し、対立を取り除くための具体的なTOCアプリケーションを選択したならば、問題はどのように変えるか?に移ります。提案された変革の規模にもよりますが、TOC思考プロセスが再び適切なツールを提供してくれます。

小さな問題や1つの問題の修正であれば、トランジション・ツリー(TrT)と前提条件ツリー(PRT)があれば十分かもしれません。 この2つのツールは、あなたに欠けているものや、変革を行う際に直面する可能性のある障害を特定するのに役立ちます。

戦略・戦術ツリー

しかし、大規模または全体的な変革や実施には、戦略・戦術ツリー(S&T)が最も適しています。この思考プロセスは、計画されている変革の説明だけでなく、それぞれの変革の具体的な目的(戦略または「何のために」)と、必要な行動(戦術または「どのように」)を把握するためにも使用されます。 また、どのような変更も、その前提となる条件があって初めて有効となるため、S&T構造では、計画されている変革に関連するすべての重要な前提条件を定義し、伝達することができます。

なお、すでに様々な環境に対応した汎用的なS&Tテンプレートが多数存在します。さらに、専門家の助けを借りれば、S&Tツリーを修正し(あるいはゼロから構築し)、変革や実行のための詳細な「ロードマップ」を示すことができます。そして、成功のために取るべき行動に関する5つの質問に対処していきます。すなわち、

  1. なぜ新しい戦略が必要なのか?[必要仮定]
  2. 新しい戦略はどうあるべきか?
  3. 戦略を達成するための最適な戦術を選択するために、どのような情報が役立つか。また、なぜその戦略が可能であり、他の選択肢よりも優れていると主張するのか。[並列前提]
  4. プロセス、方針、または測定(戦術)における具体的な変革はどうあるべきか?
  5. この戦術を実施する際に他に注意すべきことはあるか。[充足前提]

適切に構築されたS&Tツリーには、中核的な対立を取り除き、改善のための明確なロードマップを構築し、組織の将来の成長と安定のための持続可能な基盤を確立するために必要かつ十分な知識がすべて含まれています。それに対して今日、ほとんどの組織において、上述の知識のうちどれだけが本当に適切に定義され、文書化され、伝達され、体系的に検証されているでしょうか。また、企業(あるいはそのために雇われたコンサルタント会社)によって文書化されたとしても、それがすべての利害関係者にとって論理的で明確なイメージとなるような方法やツールで伝えられているケースはどれほどあるでしょうか。

組織が直面する大きな課題の1つは、変革に必要かつ十分な要素、これらの変革に必要な順序、組織内のすべての機能およびこれらの機能内のすべてのレベルの関連する貢献を明確に定義し、伝達することです。 S&T ツリーは、こうした課題(チャレンジ)に対する回答なのです。

組織の目標に対する自分の貢献度を知らない、あるいは理解していないマネージャーや従業員は、自分自身や他人の貢献度に疑問を持ち、権限と責任のギャップのために無力感を覚えがちです。

そのような組織では、ローカルとグローバル、短期と長期の最適の狭間で生じる緊張に直面し、フラストレーションを募らせ、その結果、組織内の不調和が生じる可能性があります。 いかなる不調和も、組織目標の達成と持続可能性を危うくします。ゴールドラット博士は、こうした対立を「不調和のエンジン」と呼び、その発生を抑える、あるいは未然に防ぐ現実的な方法を見つける必要があると指摘しました。こうした不調和のエンジンを取り除くことも、S&Tツリーを開発した理由の1つです。

抵抗にも種類があります

S&Tツリーが組織レベルで変革を起こすための主要なツールであるならば、個人のレベルにおいても変革を起こすことが考慮されなければなりません。S&Tツリーを教える過程で、私たちは聴衆から寄せられる「そうだけど・・・」というコメントを受け止めています。ただ個々人が口にする愚痴や不満というレベルではきわめて限定的な見方に過ぎません。私にとって何の得があるのか?という言葉にならない内なる問いに取り組まなければならないのです。このような疑問に対処しないことは、変化を起こす機会を閉ざしてしまいます。人々の個人的な抵抗に対するよりよい理解は、ゴールドラット博士によって「抵抗の階層」の中で提起されました。この内容は変革の5ステップに関する今日の理解を通じて、さらに深化しています。

下表にある抵抗の階層を眺めると、抵抗にも種類があります。抵抗はすべての状況に存在するわけではないのですが、存在するのであれば、それを認識し、論理的な順序で対応していかなければなりません。外側にある層を取り外さずに内側の層を取り外そうとしても、抵抗は強まる一方です。すべての抵抗は私にとって何の得があるのか?という内なる問いの異なる側面に呼応しています。下の表の左側は5つの変化のステップ、右側は各ステップに対応する複数層の抵抗を表しています。

1. なぜ変わるのか?第1階層 変わる必要はない!
2. 何を変えるのか?第2階層 問題はない 第3階層 問題は別にある 第4階層 問題は自分(たち)ではコントロールできない!
3. 何に変えるのか?第5階層 解決策の方向性が違う! 第6階層 解決策は問題全体に対処していない! 第7階層 ・・・そうだけど、その解決策にはネガティブな影響がある!
4. どのように変えるのか?第8階層 ・・・そうだけど、解決策を実行するには障害がある!
5. どのように変化を継続させるか?第9階層 ・・・そうだけど、条件が変わった!

各層の背後にある真の問題は何か、を理解することは興味深いといえます。

第1階層(変わる必要はない!)については、第1章で説明したとおりです。

第2階層(問題はない)と第3階層(問題は別にある)における主な問題とは、例えばターゲットに関する意見の不一致、現状に関する意見の不一致、問題の大きさに関する意見の不一致(「深刻な/現実的な問題ではない」)、非難されることへの恐れ、変化することへの恐れ(あるいは、この人がこの変化をどのように受け止めてきたか)です。参考記事としてこちらの弊社コラム「組織変革を阻む「第4の恐れ」とは?」も併せてご覧ください。

第4階層(問題は自分(たち)ではコントロールできない!)の主な問題は、過去の失敗経験、または状況や組織を変えることができないという思い込みです。

人を相手にしているので、変化に対する感情的・心理的抵抗を意識して克服する必要性

第5階層(解決策の方向性が違う!)の問題はたいてい、この特定の変化を起こすことへの恐れ、もっと良い解決策があるという信念および、または提案された解決策の利点に対する信念の欠如です。

第6階層(解決策は問題全体に対処していない!)、第7階層(そうだけど、その解決策にはネガティブな影響がある!)、第8階層(そうだけど、解決策を実行するには障害がある!)での問題は、より多くを得ようとする試みであったり、問題全体をカバーしていないという正直な反論であったりします。

第9階層(そうだけど、条件が変わった!)については、後述する第6章でご説明します。

抵抗の階層を理解することは、変化に対する合理的な抵抗の克服に対処するのに役立ちますが、私たちは人を相手にしているので、変化に対する感情的・心理的抵抗を意識して克服する必要性もあります。

その障壁とは次のようなものです。第1階層(変わる必要はない!)では、「あいまいさへの不寛容さ」。すなわち人が不確実性に脅威を感じる度合いです。第2階層(問題はない)では「社会的圧力」が障壁になります。人が集団に順応し、権威に従順で、社会的役割に従って行動する度合いです。第3階層(問題は別にある)では「個人主義」。つまり、その人の不適合の度合い、独立性、信頼性、自由の必要性を守る程度です。第4階層(問題は自分(たち)ではコントロールできない!)では「エスカレーション」。過去の投資が無駄に終わったと感じることで引き起こされる、変化への抵抗です。 そして第5階層(解決策の方向性が違う!)では「公平感」。これは過去の結果が公平に分配されなかったという思いから、再び不公平な扱いを受けないために抵抗するという障壁です。


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