岩崎 雄二といいます。プログレッシブ・フロー・ジャパン(PFJ)のシニアコンサルタントを務めています。これまでメーカーの社員として、またTOCコンサルタントとして、複数の企業における業務改革を推進または支援してきました。想定以上の成果を挙げられたこともありましたし、思い描いた手応えが得られなかったこともあります。
その時々全力を尽くしたつもりでも「あのとき、もっとこういうアプローチをすれば異なる成果が得られたのではないか」と思い返すことも少なくありません。どうすればよかったのか。いまだから言える私なりの考えや気づきを本コラムでお伝えします。変革に取り組む皆さんが壁を乗り越えるヒントになるとうれしいです。
ものづくりのカナメとなる生産管理
私は福岡県直方市にあった福岡県立筑豊工業高等学校(現在は廃校になりました)の機械科を1978年に卒業後、衛生陶器メーカーに採用され、地元の工場で技術者として踏み出しました。キッチン、バス、トイレなどに用いられる水栓用の金具や福祉機器などに利用される金属部品の製造を軸に、品質管理や生産技術、生産システム構築といったものづくりに携わってきました。
入社してしばらくすると配属先の部署に、合金鋳物に配合される元素の種類や含有量が規格内に収まっているかを短時間で調べられる蛍光X線分析装置が導入されました。併せて、品質データ分析業務の一環で、会社が購入した当時最新鋭のIBM製ホストコンピューターを利用することになり、それが縁でプログラミングや制御システムに関心を持ちました。
入社して5年ほど経ち、本社工場における無人化工場の立ち上げプロジェクトに加えられました。鋳造、機械加工、研磨、めっき、組立など一連の工程を自動化するもので、鋳造工程を中心に仕事をしました。生産ロボットと制御装置を連動するプログラムを見よう見まねで組むなどしているうちに「パソコン小僧」と呼ばれ、
「ちょっと機械が止まっとうけ、お前プログラムを見てくれ」
「こういう風に改善したいんやけど、どうしたらええやろうか」
といった相談が舞い込むようになりました。30代になると新しい生産管理システムの立ち上げに参加しました。協力会社の皆さんと一緒に、社内のサーバールームにこもってコンピューター漬けの毎日を過ごしましたが、5年ほど経つと今度は「新しい金具の事業を立ち上げるから、生産管理のほうをやってくれ」と命じられました。
そこは若手主体の部署ということもあり、中堅だった30代後半の私が同事業の生産管理課長となって購買も兼務し、取引先の人との調整や交渉もこなしました。元来、人とのコミュニケーションがあまり得意ではなく冷や汗をなんどもかきましたが、その中で生産管理というものづくりを司る業務は、製造業にとって最も重要な役割だと次第に思うようになりました。
腑に落ちた「売れた分だけ作ればよい」
50代になって私が担当する金具製品の製造部長になると、それらを統括する事業部のほうで、MTA(Make to availability:需要連動生産)を活用した業務改革に取り組むことになりました。この時、外部のコンサルタントを招いて研修を受けたのがTOC(制約理論)との出会いです。
在庫不足で欠品すれば怒鳴られ、逆に在庫が多すぎても叱られるという生産管理の苦しみを味わっていたので、TOCにおける「売れた分だけ作ればよい」という説明には「そりゃそうやな」と腑に落ちるようでした。
私が製造部長を務めるのは、60名程度の部署でしたが、自分たちの部署でその考え方を取り入れてやってみると確かな手応えがありました。制約に集中して流れを良くすると、大幅なリードタイム短縮と在庫の削減を達成することができました。

そのことが社内で知られ、事業部全体で取り組む推進組織として結成された業務改革推進室室長に任じられました。かれこれ4年ほどの取り組みでしたが総括すれば、限られた時間のなかで納得する成果を手にすることはできませんでした。
事業部全体は、私が製造部長を務めた事業部の規模に比べると30倍以上です。各部署で培われたさまざまな業務上の慣習や考え方の違いともしばしば衝突しました。売れた分だけ作る、という考え方は、逆に言うと売れていなければ作らなくてよい、フル操業してはいけないことを意味します。それに対して「設備や人材を遊ばせるのか」「部署の稼働率は下がってもいいというのか」といった反発もありました。
失敗からの貴重な学び
とはいえ、私が責任者だった部の製品の一部を下請け製造されていた取引先企業の担当者からは、とても喜ばれましたね。
「自社でMTAに取り組んだところ在庫がめちゃくちゃ減った」
そうです。
事業部全体でMTAに取り組んだ時のことですが、ワークショップでは業務改革について皆で合意形成したのに、現場ではそのように動いてくれないということがしばしばありました。なぜだろう、と悩み、少々恨めしく思ったことさえあります。
TOCを切り拓いたエリヤフ・ゴールドラット博士は、人は善なり(People are good)が持論でしたが、当時の私にはそうは思えませんでした。ただ、あの時にもっと踏み込んで、一人ひとりの本音を聞き、寄り添った提案ができたならば結果は変わっただろうかと思うことがあります。
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プログレッシブ・フロー・ジャパン株式会社
シニアコンサルタント
【岩崎雄二(いわさき ゆうじ) プロフィール】TOTO株式会社にて、生産技術・生産システムSE・生産管理・購買管理・製造に携わる。事業部へのTOC導入に際し、推進組織として結成された業務改革推進室室長として、会社・組織・風土を変えることに奔走。TOCを現場で実践し、制約に集中して流れを良くすることだけで、大幅なリードタイム短縮と在庫削減を達成した。
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