TOCICO(TOC国際認証機構)の年次国際カンファレンスTOC Innovation Summit 2025が、2025年10月5日から8日にかけて、米国ネバダ州のラスベガスにて開催されました。 本イベントでは30を超えるセッションや交流の機会を通じ、世界各地で展開されるTOC(制約理論)を活用したイノベーティブな事例や変革への挑戦、ユニークなソリューションに関する知見を参加者同士が共有しました。
バージョンアップしたシステムを紹介
10月7日にはプログレッシブ・フロー・ジャパン(PFJ)のプロジェクトディレクターの中井博胤も講演しました。弊社が取り組む研究開発プロジェクトに関する内容です。
各セッションは、MRO、テクノロジーとAI、サプライチェーン、政府と公共分野、ヘルスケアなどのカテゴリーに分けられています。弊社は、テクノロジーとAIに関するカテゴリーで、昨年ドイツで開催されたカンファレンスに続く2回目の発表となりました。
昨年、弊社はドイツのバート・ナウハイムで開催されたTOC Innovation Summit 2024で、独自に研究開発したTOCで用いられる思考プロセスをAIで支援するシステムをご紹介しました。
研究開発プロジェクトの出発点には「企業経営における問題の解決などにあたり、TOCの思考プロセスをもっと身近で活用しやすくすることはできないか」という疑問(自問)がありました。もちろん、すべての思考プロセスやツールを網羅することは難しいとしても、まずは「何を変えるか」(What to change?)の検討で用いられるUDE(Undesirable Effect:望ましくない結果)とCRT(Current Reality Tree:現状ツリー)の作成は専門家に頼らずとも進められないだろうかと考え、研究開発のスコープを設定しました(詳しくは、こちらの記事「身近になる思考プロセス」をご覧ください)。
こちらの研究開発の成果発表に対して昨年、聴講者からさまざまな反応がありました。議論のたたき台となる入口を作るうえで有効ではないかという手応えを私たちもつかみました。
機能やデザインを改善、研究開発のスコープも拡大
昨年に続くTOC Innovation Summit 2025での発表テーマは、「生成AIとAIエージェントによるTOC思考プロセスの民主化」です。バージョンアップしたシステムを紹介しました。
従前システムとの大きな違いとしてまず、用いる生成AIそのものが賢くなったことです。処理できるトークン数が増え、さまざまなサービスと連携しやすい環境が入手しやすくなりました。それらを活用することで、以前のバージョンで必要だった補助ツールやプロンプトの調整作業などが不要となりました。システムのユーザーインターフェースがシンプルになって使いやすさも増しています。弊社では、今回開発したツールを無償で利用できるトライアル版をご用意しました(こちらのリンク先にあるフォームからご利用登録が可能です)。
さらに弊社の研究開発のスコープをUDEとCRTの作成から、TOCにおける望ましい状態(DE:Desirable Effect)や、未来のありたい姿(FRT:Future Reality Tree)などの作成支援へと拡げました。
本カンファレンスのセッション全体を見渡すと、AIを活用したシステムやツールに関する話題や発表が昨年よりも明らかに多くなったと実感します。その中の一社、南米に拠点を置くある企業は、2024年に私たちプログレッシブ・フロー・ジャパンがドイツで発表した研究開発成果に触発されて自分たちのシステムを開発したことを講演で述べていました。私たちも本カンファレンスを通じて、さまざまな刺激を受けるとともに、新たな発見やつながりが得られました。

AIが「答え」を出してくれるわけではない
AIと思考プロセスの相性の良さは次第に注目されつつありますが、注意したいことがあります。それは、AIが経営上の問題などを「解決する」または「答えを出す」わけではないということです。
たとえば「売上の減少」という望ましくない結果に対して、「なぜ売上が減少しているのか」とAIに問いを立てます。すると、各種情報に基づき「広告収入の減少」「プロジェクトの遅延」などの要因を列挙したり、またはそれらの因果関係の可能性を示唆したりする作業は、かなり効率化してくれます。内容が完璧ではないとしても、人間の能力では到底追いつかないような膨大なデータを網羅的にかつ極めて短時間で処理することはAIの得意な領域です。
しかし、結果を生み出している根本的な原因を認識、特定するのは最終的に、経営に関わる当事者の皆さん、人間の仕事です。対話を通じたステークホルダー相互の理解、協力に向けた合意形成、変革に向けた活動の実践、評価、軌道修正などの営みをどれだけよどみなく、俊敏に進められるか。それによって営みから創出される価値は変わってきます。
【お知らせ】 さて、今回のカンファレンスで取り上げた研究開発プロジェクトや開発中のシステムについて、2025年11月21日(金)に開催される「TOCシンポジウム2025 20周年特別企画 ~TOC関係者全員集合~」で発表いたします(イベント概要および参加方法についてはこちらのページをご覧ください)。リアル会場とオンラインでのハイブリッド開催です。みなさまのご参加をお待ちしております。
本コラムの内容やトライアル版のツールについて、こちらの問い合わせフォームからご意見やご感想をお寄せください。また、弊社SNSへの投稿もお気軽にどうぞ。

