私たちが変化する動機は何なのでしょうか? メリットだけでなく、変化しない場合のデメリットまたはリスクも織り込んで動くのは当然ではないでしょうか? 人が変化を受け入れるためのさまざまな動機を見事に表現しているのが、ゴールドラット博士が著書「ザ・クリスタルボール」を宣伝するための、マーケティングツールとして紹介した動画「Overcoming Resistance to Change – Isn’t It Obvious?」です。YouTubeで公開されています[リンク先はこちら]。まだという方はぜひご覧になってみてください。これから取り上げる用語の理解にも役立つと思います。
ゴールドラット博士の最後のビジネス小説であるこの著書は、小売業および、TOCの小売業向けソリューションの開発の始まりについて書かれています。しかし、彼が強調していた本当の核心は、人は変化に抵抗するのか?でした。 一言で表せば、変化を起こすかどうかの判断は、変化を起こすことのプラスとマイナス、そして変化を起こさないことのプラスとマイナスという4つの力のバランスで決まるということです(この4象限をチェンジマトリクスと呼びます)。

この視点を用いて、組織外からの変化の提案、つまり営業が顧客や見込み客に提供する変化について説明しました。 私たちはこれらのテクニックを、経営陣の内部で提案された変化を分析する場合にも、使用することを提案します。
そのうえで、第1章で述べた、5つの変化のステップについてあらためて、考えてみましょう。追加された第1ステップはなぜ変えるのか?という質問です。
どうして前提となる質問をオリジナルのステップに追加する必要があったのでしょうか? もういちど考えてみましょう。ゴールドラット博士は、変化の「なぜ」は当たり前のことだと考えていました。しかし、ほとんどの場合、経営陣にとってこれはあまり明確ではないことが分かってきました。
一般的には、変化をもたらすポジティブな理由、つまり「金の壺」に焦点を当てることが多いのです。この要素だけを取り上げて、変化が提案されることは頻繁にあります。「4年後には売上と利益を2倍にできるぞ! ・・・新しい工場を建てれば」または「最新のERPに投資すれば」といったものです。しかし、このやり方では、多くの場合、後述するさまざまな抵抗を引き起こすだけで、変革案はすぐに消滅してしまうものです。
現代の経営においては、企業の制約は、需要に対して供給をする能力という内部的なものではなく、決定的な競争力の欠如にある場合がほとんどです。新しい戦略の必要性(少なくとも新しい方法を模索する必要性)についての理解は、前述したチェンジマトリクスの分析で幾度も深められていきます。

私たちは、多くの経営者と、4象限のエクササイズを行いましたが、いつもワニの存在から始めています。そうすることが、破壊的な新技術の市場参入であれ、大手顧客が困難に直面していることであれ、新しい競合が価格を下げていることであれ、世界経済の減速であれ、正しく理解しようとするためには必要だからです。ワニは何を追いかけているのでしょうか? ワニはどれくらいの大きさで、どれくらいの近さにいるのでしょうか?
思い描く金の壺を考えると、現在の戦略で到達できるのでしょうか、それとも新しい道筋を真剣に分析するために注力すべきなのでしょうか?
変わる必要性に同意したいときに直面する目下の課題は、「変わらない理由」です。
新しいやり方で遭遇する可能性のあるリスクとは何でしょうか? その変化は、私たちが期待するような利益を実際にもたらすでしょうか? そして何より、私たちはどれだけ自分の人魚姫(現在のコンフォートゾーン)に愛着を持っているのでしょうか? この4つの力を分析することで、「なぜ変わるのか?」という問いに明確に答えることができるようになります。ワニの評価に注力し、真剣にリスクを計算することは、多くの経営陣にとって一般的なことではありません。ワニの大きさを分析する努力をすることで得られる危機感が、分析を継続するために必要なエネルギーを生み出すのです。
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