TOC思考プロセスを応用したTEPCOグループのITシステム開発を支援
東京電力ホールディングス株式会社などで構成されるTEPCOグループは、2017年よりITプロジェクトの成功率を高めるQCD改革に取り組んできました。同グループのITシステムの開発やサービス提供を担う株式会社テプコシステムズのコンサルティング・ソリューション推進室に所属する、矢口博氏に取り組みの内容や成果、ポイントなどを伺ったインタビューの後編です。
プロジェクト成功のポイントとは
――成果が得られたポイントはどこにあったと思われますか。
矢口:いくつかありますが、1つは全体を俯瞰できたことです。(前編で述べたとおり)ITシステムのユーザーであるTEPCOグループとシステム会社であるテプコシステムズを横断的に捉え、なぜシステムを開発するのか、何をやりたいのか、という重要な意思決定に経営層が必ず関わるプロセスとマネジメントに見直しました。
そのために上層部を含めたキーパーソンとのコミュニケーションにかなりの時間をかけました。新しいことに対して、抵抗感を覚える方も大勢います。「なぜ、それをやらなければならないのか」という胸中の漠然とした問いや不満を解きほぐしていかなければ、関係者間での方向性はまとまりません。TOC思考プロセスの中にあるS&T(戦略と戦術)ツリーはたいへん有効でした。もしTOC思考プロセスなどを知らずに進めていたならば途中で挫折していたかもしれません。
――その後の取り組み状況について教えてください。
思考プロセスやS&Tツリーは自社の成長戦略を検討し具体化するツールとしても有効であると実感すると同時に、このような取り組みを一緒に進められる同志を増やす活動を進めています。
矢口:プロジェクトを成功させる仕事の流れはある程度できた、という手ごたえは徐々につかんでいます。そのうえで、案件によりスピーディーに対応できるような改善や取り組みを進めています。2019年からはTEPCOグループのITサービス調達機能の変革に関する施策を組み込んで拡大しました。
一方、2022年からはTEPCOグループ全体の方針について、自社の成長戦略を描くとともに長期的な成長戦略を具体化する活動を行いました。成長戦略はNF戦略(ニューフロンティア戦略)として経営戦略の骨格に組み込まれています。
―― 一筋縄ではいかない取り組みですが、これまでの行動の動機、モチベーションにあったのは何でしょうか。
矢口:私たち、テプコシステムズが提供するITサービスがよくなれば、TEPCOグループが全国のお客様に提供する付加価値も高まるはずです。数百万へのお客様や社会への貢献を通じて、日本全体がよりよくなる一助になれば、というロジックが私の中で明確になっていき、行動しない理由はないなと考えるようになりました。
プログレッシブ・フロー・ジャパンのサポート
――プログレッシブ・フロー・ジャパン(PFJ)のコンサルテーションが、他のコンサルタントと異なっていた点について教えてください。
矢口:一連の改革を進めるにあたって社内でも外部のコンサルタント会社をしばしば利用しました。そこで多く見受けられたのが顧客の視点ではなく自社の儲けを優先する「仕事を増やすコンサル」です。やるべきことの中に、しなくてよいことも織り混ぜて「私たちの提案に沿って進めていただければよくなります」「うまくいかないのは、私たちの提案通りにしないからです」とこちらの危機感をあおり、コンサル領域を拡げようとするパターンですね。
他方で、TOCを含め何か特定のマネジメント理論やソリューションなどにこだわって押し付けるコンサルテーションも困りものです。
大きな変化を現場で必要とする場面において関係者が抱く「なんでそれをやらないといけないの?」という疑問や抵抗感を解消しないまま進めても、いずれ壁にあたります。PFJは、私たちに寄り添って、やりたいことが何なのか、ということを聞いてくれました。そして、それに呼応する形で何が一番よいのか、なぜそれが必要なのか、どのように変えていくのかを提案してくれています。非常にやりやすいですね。
皆さんの企業でもたくさんの課題を抱えていらっしゃるケースが少なくないかもしれません。私たちの経験がお役に立てるならばうれしいです。
(インタビュー実施:2023年12月)
→ 事例紹介 テプコシステムズ様(前編)はこちらから
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