めまぐるしい速さで変化し、先々が見通しにくい時代。生きていくために必要な資金を稼ぐ(儲ける)スキルとして、考える力行動する力変革し続ける力という3つの重要性を本コラムで指摘するのは、プログレッシブ・フロー・ジャパン株式会社のプロジェクトディレクター、河野全克です。その中の「変革し続ける力」で鍵になるのは、「問題の本質を見極めて行動する」という点です。実務で活かせる効果的な方法を訊きました。 

「変革し続けるプロセス」でカギになる考え方

―― 前回のコラムでは、変革し続けることの重要性とともに、問題の本質を見極めて行動するためのヒントがあるということに触れました。

今回は、私の経験を踏まえて、そのヒントをご紹介します。

「変革に向けたプロジェクト」は始まりと終わりがありますが、「変革し続けるプロセス」は基本的に終わりのない継続的な取り組みです。後者では本当に変えるべきことにリソースなどを振り向ける「集中の5ステップ」を活用します。次の図をご覧ください。

1
制約を見つける

「どこがボトルネックとなり全体のパフォーマンスに影響を及ぼしているのか?」を考える

2
制約をどう活かすかを決める

「見つけた制約を最大限活用するためにはどうすればよいか?」を考える

3
その他すべてを制約に従わせる

全体を制約中心に見直す

4
制約の能力を高める

制約の限界を押し上げる

5
次の制約に目を向ける

次の変革へ向かう

では、「集中の5ステップ」について、ひとつ例を挙げましょう。下図は、TOC(制約理論)をシンプルに説明するためのものです。

この図は、TOCの創始者であるエリヤフ・ゴールドラット博士が、「企業や組織のパフォーマンスを向上させるためには、システム全体の制約に注目すべき」ということを説明する際にしばしば用いました。

こちらの図を例にしながら、5つのステップをそれぞれ詳しく説明しましょう。

制約を特定・改善することで組織全体の成果を劇的に向上させる

1)制約を見つける=「どこがボトルネックとなり全体のパフォーマンスに影響を及ぼしているのか?」を考える

前掲の図は、ある製品が完成するのにAからEまで5種類の部品を組み付ける工程があることを表しています。○のなかに記された数字(A工程であれば「16」)は、その工程における単位時間あたり最大の処理能力です。A工程は1時間あたり最大で16個の部品を組み付けられる能力があるとします。さて、上図のシステムにおける制約(ボトルネック)はどこでしょうか? 考えてみてください。

答えは、C工程になります。理由は、処理能力が最も低く、システム全体のアウトプット(パフォーマンス)を決定しているからです。A工程やB工程が最大の処理能力を発揮しても、C工程は最大で1時間あたり10個しか組み付けられないので、A工程やB工程には製造途中の仕掛品が在庫として積み上がっていきます。

「こんな問題、楽勝だよ」と思われたかもしれませんね。

この例を出したのは、TOCの考え方では、制約を特定し、改善することが組織全体の成果を劇的に向上させる鍵ということをお伝えするためです。

言い換えると、制約となっていない工程(非制約)をいくら改善してもアウトプットは増加しません。併せて、その改善に使ったリソースは無駄になるだけでなく、C工程の前には仕掛かりの山ができ、流れが停滞しかねません。

2)制約をどう活かすかを決める=「見つけた制約を最大限活用するためにはどうすればよいか?」を考える

ステップ2では、システムの制約を徹底活用する方法を決定します。ステップ1で判明したシステム全体の制約となっているC工程の能力を最大限発揮できるように既存の資源やプロセスを改善するわけです。たとえば「無駄な待ち時間の削減」や「優先順位の最適化」などの検討が挙げられます。​

3)その他すべてを制約に従わせる=全体を制約中心に見直す

ステップ3では、ステップ2における決定に他のすべてを従属させます。

従属させる従わせる、といった言い回しには、なんだか命令されているようで「何言っているんだ!」と抵抗感を覚えるかもしれません。ただ、『非制約』となっている工程がフル稼働する、など精一杯頑張ってしまうと、前述したように会社の経営に悪い影響を与えてしまうことがあります。ここでお伝えしたいのは、『非制約』については、制約(この場合はC工程)の能力を超えてまで処理をしない(これを簡潔にいえば、従属させる)ということです。

ただし、単に制約に合わせる、という意味ではありません。重要なのは「制約の能力を最大限発揮できるように『非制約』は何をすればよいか?」について知恵を絞ることです。全体のアウトプットを増やすために、いまあるリソース(資源)や能力(キャパシティ)、時間などをいかにやりくりするかがポイントです。

4)制約の能力を高める=制約の限界を押し上げる

「出せる限りの知恵は出し尽くし、やれることはやり切った。これ以上はもう無理」となったら、いよいよ新規や追加の投資、お金の出番です。設備能力が不足しているならば設備の追加や改造、リソースが不足ならリソースの追加、という具合に、この段階に至って初めてお金を本格的に投じ、制約の能力を引き上げます。

5)次の制約に目を向ける=次の変革へ向かう

ステップ4まで進むと最初に見つけた制約はすでに制約ではなくなっているはずです。ここではC工程の1時間あたりの処理能力が「10」から「15」に向上したとします。

けれども「メデタシ、メデタシ」と喜んでばかりもいられません。よくご覧ください。別の部分が新たな制約になっているはずです。

制約は絶えず変化していく

さあ、もう一度、5つのステップを繰り返しましょう。改善に終わりなしです。

(関連記事:キャパシティが足りず受注をあきらめざるを得ない?

制約のありかを見抜くには

ーー 制約は変化し続けるゆえに単発の「変革」ではなく、変革し続ける力が必要だということですね。

そうです。見方を変えると、それだけシステムのなかには組織全体の成果を飛躍的に高められるチャンスが眠っているといえるかもしれません。とはいえ、重ね重ね強調したいのは、『非制約』となっている工程まで精一杯頑張ってしまうと、会社の経営に悪い影響を与えてしまうことがあるということです。マネジメントを担う皆さんも日々調整にご尽力されていると思いますが、これまで述べたように集中するところを間違えると、むしろ逆効果になってしまいます。

私たちTOCコンサルタントは「さあ、C工程以外の工程は、制約となっているC工程に合わせて動きましょう。決して、自工程の能力をフルで発揮しないように! 頑張れば頑張るほど会社を苦しめるかも知れませんよ! C工程に集中した改善をしましょう!」と声を大にしてお伝えしたいところです。

ーー しかし、実際の生産現場は単純な工程ではなく、もっと巨大で複雑な工程で構成されているはずです。そもそもどこに制約があるかすぐ見つからないかもしれません。そういう場合にどうすればよいでしょうか?

製造現場を長年見てきた経験からいえるのは、「生産日程の進捗管理表を見れば、すぐにあたりがつく」です。​

皆さんも、各工程を比較して処理できる数量が少ないところが制約だ、とあたりをつけることができますよね。もちろん、何らかの都合であえて処理数量を減らしているということもあるので、あたりをつけるという言い方をしています。いきなりドヤ顔で言うと、要らぬ反感を買ってしまうかもしれませんからくれぐれもご注意を。​

私たちは仕事柄よくクラインアントの工場を見学をさせていただくことがあります。しかも、進捗管理表などを前もって拝見していない状態で見学することが多くあります。事前に見せてもらえるとしてもせいぜい工程の流れ図ぐらい。ところがその状態で見学し、私が「こちらの工程が制約ですか?」と尋ねると、「なんでわかったん!」と驚かれることがしばしばです。​

そのカラクリは、工程前の在庫を見ているのです。​

在庫が少ない(ない)」ということは、「前工程で処理されたものが次工程で確実に処理されている」ということです。つまり、「能力はトントンまたは上だ」と見積もることができます。​

一方、「在庫が多い」ということは、「前工程で処理されたものが次工程で処理されていない」という推理が成り立ちます。つまり、「能力が不足している“可能性”がある」と読めます。​

このように、制約を特定するのは、割と簡単にできるのです。

ーー そうなんですか。

注意すべきは、ステップ1の判断に続く行動です。ここで誤ってしまい、期待した成果が得られないケースがよくみられます。

ーー> 制約を特定した後に陥りがちな行動とは、そして取るべき適切な行動については、次回コラムに続きます。

河野 全克
河野 全克(かわの まさかつ) 
プログレッシブ・フロー・ジャパン株式会社 
プロジェクトディレクター

【河野全克(かわの まさかつ) プロフィール】SHARP(シャープ)を一躍メジャーにした液晶事業のサプライチェーンを長年牽引するとともに、顧客・サプライヤー・自社のwin-win-win(三方良し)により構築した調和の力で事業の発展に大きく貢献した。現場叩き上げだからこそ語れる失敗談やそこからの学びと成功体験、さらにTOCの合わせ技で、真にクライアントに寄り添うコンサルタントとして活躍中。奈良県出身。

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