めまぐるしい速さで変化し、先々が見通しにくい時代。生きていくために必要な資金を稼ぐ(儲ける)スキルとして、考える力行動する力変革し続ける力という3つの重要性を本コラムで指摘するのは、プログレッシブ・フロー・ジャパン株式会社のプロジェクトディレクター、河野全克です。今回はその中の「変革し続ける力」について訊きました。 

「変革する」だけでは不十分

―― 「考える力」「行動する力」の必要性は前回までのコラムで触れました。今回から「変革し続ける力」について解説してもらいますが、変革を「する力」ではなく「し続ける力」と表記するその意図は?

企業が将来にわたって存続していくために、環境に応じて自ら「変革する力」が必要であることは皆さんも日々感じられていると思います。しかし、それが単発では十分とはいえません。求められるのは、絶えず「変革し続ける力」です(関連記事:「変化の中で永続する企業の条件とは」)。 

ある企業が、斬新なアイディアなどでヒット商品やサービスを生み出し、企業価値を向上させることに成功したとしましょう。ただし、その一瞬の「栄華」に浮かれてしまうと命取りになりかねません。競合他社もチャンスを手にしようと相手を研究し、必死に取り組み続けているからです。

苦労や工夫を重ねて大ヒットする商品やサービスを生み出すことは本当に素晴らしいことです。けれどもそこにあぐらをかいてしまえば、衰退するのはあっという間です。私はメーカー勤務時代に、華々しいヒット商品を仲間と生み出す喜びと転落していく辛さ、どちらも味わいました。とりわけ大企業が衰退すると自社の従業員だけでなく、パートナー企業の従業員の安心、安全まで奪ってしまいかねません。変革する力ではなく、変革し続ける力が必要だと私が強く思う理由がそこにあります。

成功の呪縛と変化に伴う痛み

―― ところで2025年1月、日米通算4257安打を放ったイチロー氏がアメリカ野球殿堂入りを果たし話題になりました。野球に限らずどの分野もそうですが、特に多様な資質や価値観を持つ人材で成り立つ企業という組織のなかで絶えずチャレンジを「し続ける」というのは容易ではありません。 

そうですね。ビジネスの世界において、変革または変化し続けることが難しい理由は、大きく2つあると私は考えています。 

まず、「過去の成功体験が変化を妨げる(成功の呪縛)」という現象です。大きな成功を収めた組織や個人ほど、そのやり方や価値観に強い自信と愛着を持ちます。それ自体は決して悪いことではないのですが、成功体験に縛られたままでは新しい挑戦に対してブレーキがかかることがあります。「あの時うまくいったから、今回も同じようにすればいいのではないか」。そう考えることが気づかぬうちに、貴重な変化の芽を摘んでしまうのです。

次に、「変革または変化には常に痛みや不安が伴う」ということです。新しいやり方にはリスクがつきものですし、現場においては一般に手間も増えます。経営陣の「変わろう」という意思が、現場からみると「また負担が増えるのか」とネガティブに受け止められてしまうことも少なくありません。 

私もメーカーに勤務していた当時、自分なりに変革に向けて奮闘しましたが、一兵卒の企業戦士(まあ、”企業兵士”ですね)だけでどうにかなることばかりではありませんでした。 

問題の本質を見極めて行動するためのヒント

ーー ところで、変革し続けることを拒む「痛み」がある、ということですが、具体的にどういうものでしょうか?

ご説明しましょう。下表では3つにまとめました。 

痛みの種類
精神的な痛み「安心」「慣れ」との別れ(慣れ親しんだやり方や環境を手放すときに感じる) 
自分の価値が脅かされる感覚(これまで評価されてきたスキルが変化により通用しなくなるかもしれない、と考えるときに覚える)
実務的な痛み新しいものを導入することによる費用や時間の消費(一時的な生産性の低下が発生することへの懸念) 
やらされ感から生じる現場でのモチベーション低下
組織的な痛み変革を推進する人と、守ろうとする人の対立により深刻な分断を生む可能性 
変革を主導するリーダー層の孤立

こうした「痛み」を見て見ぬ振りをするのではなく、しっかり向き合い対処する視点がなければ、変革はただの「掛け声」で終わってしまい、継続は難しいでしょう。 

―― なるほど、成功の呪縛もある、痛みや不安もある。けれどもそれら「変革し続ける力」を阻むものを乗り越えないといけない、ということですね。実際に手に入れることができるのでしょうか? 

そのために必要なことはなにか、これから順に説明して参りましょう。鍵になるのは、変革し続けるために「問題の本質を見極めて行動する」という点です。私が「企業兵士」時代から今日まで長年実務で活用してきたTOC(制約理論)には、実にシンプルで力強い方法がありますのでご紹介したいと思います。 

ーー>次のコラムに続きます。

河野 全克
河野 全克(かわの まさかつ) 
プログレッシブ・フロー・ジャパン株式会社 
プロジェクトディレクター

【河野全克(かわの まさかつ) プロフィール】SHARP(シャープ)を一躍メジャーにした液晶事業のサプライチェーンを長年牽引するとともに、顧客・サプライヤー・自社のwin-win-win(三方良し)により構築した調和の力で事業の発展に大きく貢献した。現場叩き上げだからこそ語れる失敗談やそこからの学びと成功体験、さらにTOCの合わせ技で、真にクライアントに寄り添うコンサルタントとして活躍中。奈良県出身。

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