副作用としてのフローの乱れに注意 

昨今、日本企業で不正や不祥事などが相次いで報じられています。組織内だけでなくサプライチェーンにおいても、不適切な取引慣行や法令違反などの問題が指摘されます。SNSによる情報の拡散がきっかけになったり、コンプライアンス対応の一環で内部通報制度を導入したりと「不正の見える化」が進んだことが要因といえそうです。 

気になるのは、不正や不祥事に対する原因や対策です。企業が設置した特別調査委員会などの報告などによると、原因として業績偏重の社風不都合なことを隠蔽する企業文化社員の意識の問題などが指摘されているケースが少なくありません。

日本人の美徳と称えられた勤勉さや几帳面さ、誠実さが日本企業から失われたとは思いません。しかし、不正の原因が、もし社内の雰囲気や個人の意識の問題であると結論づけられれば、その対策は意識改革のための教育研修の強化、見落としを防ぐチェック項目や工程の追加、モニタリングシステムの導入、報告書の作成と確認、フィードバックの義務化などが検討されるでしょう。

副作用としてのフローの乱れに注意 

また、周りからの指示や命令に対して断れないようなプレッシャーをかけたりハラスメントを起こさせたりしないよう、ノーと拒否しても影響しない人事評価に見直す、達成する目標を緩和する、といった対策が講じられるかもしれません。 

それぞれの対策はいずれも大切です。それ自体を否定しませんが、対策や取り組みによって副作用として仕事の流れ(フロー)の乱れが生じることがあり、注意が必要です。 

対策から分岐する「枝

各種対策の強化は、多忙を極める現場の時間を削ることになり、社員の負荷増大を招く可能性があります。現場の負荷が次々と連鎖して、納期順守率の低下や顧客の離反が起きては目も当てられません。 

現場に与えるプレッシャーを緩和し、ゆとりを持たせたることも社員の心身に配慮した施策です。しかしその結果、リードタイムが長期化し、資金繰りの悪化などを招くおそれはないとはいえません。 

下の模式図は、こうした副作用としてのフローの乱れを説明したものです。対策によって期待されるポジティブな効果(左側)のみならず、ネガティブな副作用(右側)が枝分かれで生じてしまうことを示しています。

対策から分岐する「枝」

このようにフローが乱れる事象は、不正や不祥事の防止対策に限らず、 組織の中で何か改革をしようとする際にしばしば起こります

もちろん、そのような副作用がありえることは重々承知のうえで、対策や改革は断行しなければならない、という差し迫った事情があるかもしれません。ただし、ひたすら突き進むことは、必ずしもよい結果につながるとは限りません。 

  • 「さまざまな改革が思うように進まない」 
  • 「期待したような成果が出ない」 

といった袋小路に迷い込む原因につながるからです。

切れ味鋭い解決策ほど副作用が発生す 

改革に際して留意しなければならないのは、施策によって生じる副作用やフローの乱れが生じないように先手を打つ、あるいは、それらを見越したケアをしながら進めるということです。 

解決策によってこうした副作用が起きないかを事前に精査することは、解決策の導入を確実なものにするために有効な手段です。TOC思考プロセスでは、この副作用の事前精査をネガティブ ブランチ リザベーション」(Negative Branch Reservation:NBR)と呼んでいます。ブランチとは「枝」、リザベーションは留保と訳されますが「少し立ち止まって精査する」という意味です(関連コラム:「話がうまくかみあっていないな」と思ったら(前編))。 

反対派や抵抗勢力と呼ばれる方は、実は、対策や改革の推進側には見えていない副作用(ネガティブ ブランチ)について述べていることが非常に多くあります。

また、切れ味が鋭い解決策ほど、ネガティブな枝(副作用)が必ず発生するといっても過言ではありません。そして、分岐したネガティブな副作用(枝)を放置すると、結果として得たいポジティブな効果にも悪影響を及ぼすことになりかねません。

では、このようなネガティブ ブランチに対してどのように手当てをするとよいでしょうか? 先ほど触れたネガティブ ブランチ リザベーションの方法論はその一助になります(NBRについては稿をあらためて考察したいと思います)。 

今回お伝えしたいのは、改革に取り組んでいるけれども対策が思うような成果につながらない、という場面で有効なのは、対策がもたらす副作用やフローの乱れに着目する、ということです。 

お悩みの際にはぜひ当社にご相談ください。ピンチをチャンスに変えるきっかけになれば幸いです。


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