
プログレッシブ・フロー・ジャパン株式会社
プロジェクトディレクター
日本では昨今、働き方改革の一環でリスキリングや学び直しの機運が高まっています。人手不足による供給力低下の解消、増大し続ける社会保障費の抑制といったメリットが期待される一方、そもそも、どんな人材が足りないのか、どんなスキルを磨けばよいのか、迷走する感も否めません。半面でこの転換期を変革の波やチャンスと捉える見方もあります。そもそも日本はこれから将来、何を売りにしていくのか、どうやって世界と伍していくのかーー。近頃のモヤモヤした感じをプログレッシブ・フロー・ジャパンのプロジェクトディレクター、河野全克にぶつけてみました。
【河野全克(かわの まさかつ) プロフィール】SHARP(シャープ)を一躍メジャーにした液晶事業のサプライチェーンを長年牽引するとともに、顧客・サプライヤー・自社のwin-win-win(三方良し)により構築した調和の力で事業の発展に大きく貢献した。現場叩き上げだからこそ語れる失敗談やそこからの学びと成功体験、さらにTOCの合わせ技で、真にクライアントに寄り添うコンサルタントとして活躍中。奈良県出身。
なぜ「儲ける」必要があるの?
――子どもたちに将来、高等教育を受けさせようと小中学校から塾に通わせる教育熱が一部で高まっています。先手必勝かもしれませんが、そもそも「多くの組織や職場で普遍的に通用するスキルをコスパよく身につけたい」と考えるのは虫が良すぎるでしょうか。
教育に求められるものがこの20~30年で大きく変化していますよね。1990年代前半のバブル経済崩壊前後にメーカーで勤務していた私には、大半の人にとって優秀な大学で学ぶということは、より良い条件で雇ってくれる企業で働くための優先チケットまたは入社後における昇進のためのチケットを得る手段に見えました。そのようなチケットを手に入れるために、子どもの頃から勉強を必死に頑張る。少子化が進む現在もなお、そのような考え方は根強いようです。
「教わって学ぶ」ことは人生の選択肢やチャンスを広げるうえで重要です。子どもをよい学校に進学させたい動機には、より良い人生を過ごして欲しいと願う親心も大きいでしょう。近年、一部の学校では能動的に自ら考えることを促すようなカリキュラムを導入しているようです。とはいえ、まだまだ多くの教育現場ではそうではなく、答えがあらかじめ用意された問題を短時間に解く訓練を繰り返すことが多いのではないでしょうか。それらのスキルは不要とはいいませんし、生徒を評価する側も答えのある問題を出題する方が採点しやすい側面があります。
決められた仕事を忠実にこなすような、たとえば、かつてのメーカーにおける大量生産のラインであれば、そういう教育を受けた人が持てはやされたかもしれません。しかし、そういうコモディティ化した製品の生産や関連するデスクワークはロボットなどの機械や休みなくデータ処理ができるAI(人工知能)技術にどんどん代替されています。もちろん、投資対効果の観点などからロボットには置き換えられない、人の手でなければ作れない製品は依然多々ある一方で、世界を相手に戦うものづくりや商売の現場では、正解が見つかりづらいさまざまな問題を解決していくために、従来の知識詰め込み型の教育方法では、もはや望ましい人材を育てることは難しくなっています。
――特別な才能に恵まれた人もいますが、年齢に関係なく「勉強はどうも苦手」「新しいことをこれ以上、たくさん覚えられない」という人も世の中にはたくさんいます。
かくいう私も「勉強」は得意ではありません。では、そういった人たちは人生を諦めなければいけないのでしょうか。そんなはずないですよね。 誰にでも、その人生のステージにおいてその時々の持ち味を活かせる役割や環境があると思います。大切なのは、自分らしく生きられる役割や環境と巡り合うために、日々準備を怠らないことではないでしょうか。
ところで、私たちが働く理由ってなんだと思いますか?
――報酬を得るため、家族を養うため、ローンを支払うため、やりがいがあるから、家業だから、など人それぞれだと思います。
そうですね。そのベースにあるのは経済的に自立して生きていくためではないかと思います。
「人生お金がすべて」とはいいませんが、生活するために必要なものであることには合意いただけると思います。手許の財布や銀行口座に入ってくるお金(収入)と出ていくお金(支出)の差をマイナスにしない、あるいは、仕事や投資を通じて、(多寡を問わず)お金を残す=儲けることは不可欠です。 働く大きな理由がここにあります。
儲けることは、利潤を追求する企業においても同様です。働く人に支払う賃金の源泉となる付加価値を生み出す、特にキャッシュフローを増やすことは、経営者に課された最も重要な責務のひとつです。
儲けの仕組みを素早く創り出すには
私たちの仕事は近年、大きく変化しています。既存の業務の流れを覚えて忠実にこなすだけでなく、自ら課題を見つけて、その解決につながる新たなビジネスモデル(儲けの仕組み)を創り出すことが求められています。
実は、自ら課題を見つけ解決していく人材はこれまでも存在し、需要もありました。じゃあ、今の時代、何が変わったのか。それは変化するスピードです。かつてないほど目まぐるしい変化に柔軟に対応するため、自ら考え、行動し、改革し続ける人材が企業にとって必要とされています。
では、このような人材を育てるためにはどうすればよいと思いますか?
――成功のための理論や過去の事例を有識者や専門家から学ぶ、とか。
とても有意義なことだとは思いますが、先述の通り、世の中が変化するスピードはますます早くなっています。今の問題を解決する(=儲ける)ためにそれらが役に立つかどうかはわからないですし、過去の手法をそのまま適用しても成果が得られなかった、というケースを私もたくさん見てきました。
端的にいうと、自ら考える力、行動する力、そして変革(改革)し続ける力の3つは、目まぐるしい変化の中で課題を見つけ、解決するために必要です。
それぞれ紐解いていきましょう。
ーー>「考えるコツ」をご紹介する次回のコラムは近日公開予定です。

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