何を変えるか?という問いは、ゴールドラット博士の継続的改善プロセス(POOGI)の枠組みの中で、変化についての捉え方を説明した当初の3つのステップ(質問)における、1番目の質問にあたります。この3つの質問については、多くの場所で詳しく説明されていますが、ここではいくつかの点について強調することが重要だと考えています。

経営者や社員の方々との最初のミーティングのほとんどは、問題や不満、困難など、TOCでいうところの「望ましくない結果」(UDE:Undesirable Effect)を収集することに割かれます。「結果」という表現からは、組織力学の中で絶えず動く原因と結果の関係性がうかがえます。ただ会社の問題を言語化してもらうと、ほとんど必ずと言っていいほど、他の類似した会社で作成されたリストと、概ね一致する長いリストが返ってきます。同じような問題、不満、困難が、世界中のほとんどすべての組織に存在するのです。そして、これらの望ましくない結果は、原因と結果のロジックによって、中核となる問題や対立に遡ることができるのです。

ゴリラの捕まえ方 - 第3章 何を変えるか?

したがって、何を変えるか?を考えるとき、問題や人々の不満などは、ほとんどの場合、複数の望ましくない結果を生み出している深い葛藤や対立の影響であることに留意する必要があるのです。

根本的な問題を見つけずに問題に対処することは、医師が根本的な疾患の存在を無視して症状だけを治療するのと同じことです。望ましくない結果の大部分を生み出している真の中核的な問題は(状況の複雑さに関係なく)本質的に単純である、というこの基本的な信念は、TOCの考え方の柱の1つになっています。

問題の因果関係が把握できていないと、私たちは問題を分類し、優先順位をつけ、大きな問題から手をつけようとする傾向があります。しかし、この方法で得られる効果は限定的で、一時的なものになりがちです。そして、この方法では、問題の核心に触れていないため、同一の、または類似の問題がすぐに再浮上してしまうのです。

TOC思考プロセスの「3クラウド」アプローチは、組織の根本的な問題(中核的な対立)を特定するのにうってつけの方法です(TOCにおいてクラウドは、対立を図示したものです。関連記事「仕事や家庭で感じるジレンマを解消するには」をご覧ください)。この方法では、3つの異なる問題を対立として表現し、それらを1つのに要約し、中核的対立から望ましくない結果までの原因と結果の関係を記述した現状ツリー(CRT)を構築します。中核となる対立を解決できれば、1つの問題だけでなく、複数の問題が解消、あるいは大幅に改善されることがわかります。

つまり、根本的な問題や対立を「何を変えるか?」のターゲットとして常に選ぶことを忘れないでください。この実践は、漸進的な改善ではなく、皆さんの組織に飛躍的な改善をもたらします。


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